お侍様 小劇場

    “遠き彼方の空の下” (お侍 番外編 81)
 

案外とやわらかい感触のする熱が、
肌のなめらかさを愛でてのこと、するするとすべってゆき、
ところどこで止まっては、ちりという浅い痛みをばらまいてゆく。
首条や胸元の鎖骨の縁、二の腕や下肢の内なぞ、
やわいところを狙っては、この身へ刻印を記してゆく御主であり。
ごつりと大きな手は片方が、背へと回されていて、
時折 体が敷布から浮き上がるほどに抱きすくめられると。
密着する肌と肌がなおの熱を呼び、
胸が締めつけられてのこと切ない吐息が洩れるのに。
次には剥がされるのが無性に怖くなり、

 「…っ。」

こちらから延ばしたしゃにむな手で、
攫われぬよう、雄々しい肩へとすがりつけば。
深々とつながっていたところが思わずの力を込めたのらしく。
頭の上で、息を詰める気配がしたが、

 「あ…っ。」

深いところに食い入っていた肉塊が、堅さを増してこちらをも苛む。
ぐいと押し込まれると、鋭い熱波が生まれ、
それが腹の下やら背条を目がけて駆け登って来ては、
こらえの利かない、はしたない声を上げさせる恥ずかしさ。
ほんのり汗ばんだ額や背中へ、細い後れ毛を張りつかせ、
時折走る鋭い悦の波に、
必死で耐えての唇を咬む女房を、双腕の中へと見下ろして。

 “誰にも聞こえはせぬのに。”

実は防犯性を高めるためという主旨を隠しての“防音処置”のお陰様、
ちょっとやそっとの物音立てても、外へは漏れないその上に、
同居している高校生も、この数日ほどは不在だというに。
日頃の習慣が抜けぬのか、
微かにでも甘い声を、妖しい睦声を上げてはならぬと、
逃れ得ぬ悦苦の波が襲いくるのへ、懸命に耐えて。
苦衷の息つく健気な気配が、
却って…御主の嗜虐をくすぐっていようとは気づかぬ彼で。
勘兵衛の頼もしい肩へと頬をつけ、
せめて顔だけでも隠そうとする七郎次だったが。
至近へと寄り添ったその間合いから、
くっくっと息を詰めて耐える様が、甘い吐息や四肢を震わすわななきが、
直接届いて伝わることが、
まだまだ精悍精強な勘兵衛を、尚もと煽り立てているとは気づかずにいるらしく。
ゆさり、強めに揺すぶられ、

 「あ…、く…ぅ…。///////」

強く走った淫靡な悦を、やり過ごそうとしてのこと。
ぎゅうとしがみついて来た腕だったのが、
離さないでと請うように思えたとしても、それは勘兵衛の側の非じゃあなかろう。

 「…っ、あ、あぁっ、や…っ。////////」

主の膝が、脚が、内肢へますますと割り込んで来たその衝撃が、
組み敷かれていた七郎次の体内へも強い動きを伝え、
そこから発した じりと熱い刺激が、下肢をとろかす熱を生む。
既に一度、先に達したその箇所へ、相手の肌が触れるのが熱くてたまらぬ。
再び張り詰めている痛いほどの熱は、
そうなっているという事実自体が、七郎次へと羞恥を呼んでもおり。
声がしたわけじゃあない、お顔を見たわけじゃあないが、
勘兵衛がほのかに笑んでいるような気がし。
それがまた彼を、はしたない身だと自覚させ、苛んでもいるらしい。
ほんのかすかな触れ合いで、こうもたやすく欲情する自分が恥ずかしい。
そうなるようにと慣らされたのだと、気づくはずも無く、
ただただ自分が淫らでいかがわしいのだと思い込み、
せめて乱れぬように、それでもって気づいて下さるなと耐えることが、
ますますのこと、自身を追い込んでいることへも気づかぬ初々しさよ。
腰から背条、うなじを上り詰めんとしている淫熱は、
そのまま脳さえ焼こうとしている凶暴さ。
せわしなく吐き出す息で喉は嗄れ、
だのに、唇は赤々と濡れてつやを増し。

 「…んっ、」

ひくりと撥ねた身を、宥めるようにと抱きすくめた勘兵衛へ、
やがては恍惚とした眼差しが潤みをたたえて向けられるまで。
今宵は一体どのくらいの合を越えねばならぬものだろか………。





 


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   *いきなりですいません
    しかもしかも、実は本題は次の章からです、悪しからず。

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